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Life in Progress

Bismarck鯖でおバカな日常を繰り返しているタルタルの、音楽と愛と欲望(?)に満ち溢れたFF11&リアル日記。
2024
04,29

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2005
03,04
(先ほど#3をアップしましたので、先に#3からご覧ください)

 
#4 February 7,2005 Nagoya


数日後、会社を早退し、智也の通夜へと向かった。
新幹線で揺られる2時間ほどの間が、実は何よりも一番怖かった気がする。
それまでは、正直悲しみというよりはパニック状態だったけれど、最初の報せから時間が経ち、自分の中で冷静にそれを受け止められるに従い、どこか懐疑的なその事実を受け止める瞬間のことがイメージされて、思わず逃げ出したくなったんだろうか。
やがてまだ見ぬ駅が近づいてくるに従い、ここであいつが生きていたんだということを改めて感じ取った。

彼の母親に連絡をすると、「迎えを行かせます。バス停で待っててください」と言われ、ブツッと通話が途切れた。
程なくして、智也とそっくりの顔の高校生が姿を見せた。
ウルフベースのはねた髪や、ちょっと垂れた目、少しがっしりとした体つきなどから察すると、まずヤツの弟で間違いないかと思った。
向こうも気が付いたようで、「すみません、遠くから来ていただいて」と頭を下げられた。
俺も慌てて礼を返しながら、「智也の弟さんだよね?よく似てるなあ」と呟くと、ケイと名乗ったその弟は、「似て欲しくなかったんですけど、よく言われます」と言いながら笑った。

白い息を吐きながら歩くこと数分で、大きな葬儀会場に着いた。
もう通夜の時間は終わっていたようで、2階へと案内される。
そこには親類が集まっていて、代わる代わる火の番をしながら、故人との思い出を語り合ってる様子だったが、その割には雰囲気が明るいのが意外だった。
やがて、奥から明るい栗色のショートの女の人が出てきた。
すぐに、彼の母親だと分かったのだが、電話の声よりもすごく若い人だった。
「あら、アイツにイケメンの友達が」
と冗談を叩いて笑う母親に、何言ってるんスか、と軽くいなしながら、名前を告げると、少し驚いた様子で、彼女はこう告げた。
「そう、あなたが・・・。智也からよく話を聞いてたの。銀行員の友達がいるなんて珍しいなって」
「そうだったんですか・・・」
「憧れてるって言ってたよ」と彼女は笑いながら俺の肩をポンポンと叩いた。
−あれだけ憎まれ口を叩いていたのに、逝ってしまってからそういうこと言うなんてずるいよお前は。
そして、場の明るい雰囲気に俺は少し戸惑いを覚えていた。
もうこの場所では、あいつは「存在していない」のだろうか・・・。

複雑そうな俺の顔を見て、智也の母親は俺の手を引き、中へと案内してくれた。
そこには白い棺が置かれていた。
「よかったら手合わせてやってね」という彼女の声に、躓きかけていた勇気が少し舞い戻った。
恐る恐る中を覗き込む。
−やっぱり、中で目を閉じていたのは、俺のよく知っているあいつの姿だった。

そっと頬に触れてみた。
ヒンヤリというよりも、どこか重たくて、虚無感が圧し掛かってくるような、圧倒的な冷気が指の神経から脳へと伝わっていく。
智也の唇は、呼吸困難だったせいか、紫色に変色していて、どこか苦しげな表情が張り付いていた。
それを見た瞬間だった。
俺はこみ上げてくるものをこらえきれなくなった。

「この大バカ野郎・・・」
視界が涙で霞んで、ぬぐってもぬぐっても涙が止まらなかった。
それを見た彼の母親が、「ごめんねごめんね」と言いながら何度も頭をくしゃくしゃと撫でてくれて、それがまたすごく切なかった。
と、扉の辺りが俄かに騒がしくなり、やがて20歳前後と思しき男が3人くらい神妙な顔で入ってきた。
「あら、あんた達も来たの。ちょうどよかった、東京から智ちゃんのお友達がわざわざ来てくれたから紹介するわね」
と、俺のほうに話が飛んできたので、慌てて俺は頭を下げた。
どうやら、地元の幼馴染軍団のようだ。
とりあえずいったん扉の前で彼らの焼香を待って、辞去の挨拶だけしようと思ったところ、
「智と同い年くらいですか?」と彼らの中でも一番背の高い茶髪のサラサラ髪のヤツが声をかけてくる。
「いえ」と首を振り、20代の折り返しをまたいでいることを告げると、彼らは本当に驚いた様子で、しばらくその話でネタにされてしまった。
こういう時って、反応がしづらくて、居心地がよくないはずなのに・・・彼らとは、不思議と近いものを感じた。
互いに知らない智也の思い出を語ることができるからだろうか。
それとも、智也の大事な人たちとこんな形で出会ったから、何らかの痛みを覚えただろうか。
今は、まだその答えを出せそうになかった。

 
そのままおいとまする予定だったのだが、流れで彼の母親や幼馴染軍団と一緒に食事に行くことになった。
俺が彼ら幼馴染たちに不思議な近さを感じたのと同じく、彼らも俺に対して初対面とは思えないほど温かい接し方をしてくれたのがうれしかった。
もっとも、20前後のヤツらに「カワイイ」と表現されるのは断固抗議したいところだったのだが。
ようやく一息ついたファミレスで、俺は彼らと今回の事件について、互いの情報を交換する機会に恵まれた。
そして、そこで分かったのは、とても悲しい事実のみだった。
そう、俺が止めようにも、止めることが不可能だったことだけ。

智也は、不思議なことに携帯電話のメールや着信履歴をすべて残していた。
彼は、1月の下旬に、とあるメールを送っていた。
「サイトを見て興味を持った。仲間にしてほしい」
そして、そのメールの時刻には、俺は智也と一緒にメシを食っていたはずだった。
次のメールには、「今友達と一緒だから自殺のことバレるとやばい。また明日」というメールが書かれていて、それを裏付けることになる。
そして、その後の出来事を思い返していると、ふと大事なことを失念していることに気が付いた。
その二日後、俺は智也に呼び出され、ご飯を奢ってもらったのだった。
「なんだよ、珍しいな」といぶかしむ俺に対し、「いつも奢ってもらってるからさ、たまには」と笑いながら俺をうながし、好きなとこ連れてってやるよ、と彼なりの軽口にちょっとした違和感を覚えたのだが、結局はそのまま流してしまったような気がする。
ただ、その帰りに彼はiPodを購入していた。
U2のサインが入った限定モデルで、メタリックなデザインにクリムゾンレッドが映えるデザインで、何度も見せびらかしてきたのを思い出す。
そうやって、欲があるということは、言い換えれば希望が、そして夢があるということだ。
そんなヤツが軽々しく自殺するなんて、俺にはまだ信じられなかった。

結局、彼は誰にもそれを継げず、自殺志願者たちと共に、俺たちの手の届かない場所に行ってしまった。
彼の好きだったB'zの曲が流れるたびに、ふと頭を掠めるのは、だんだんとその事実に慣れていく自分が否定できないことなのかもしれない。
そうして「思い出す」ことで、俺はだんだんとその事実を受け入れ始めた。
そして、2週間が経ち−俺は彼の気配のない場所への引越し先を決めたのだった。
 


 
#Epilogue  March 3,2005 Tokyo


春の気配が近づくはずの3月。
東京には季節外れの雪が降った。

俺は、およそ1ヶ月ぶりに目黒駅に立ち寄った。
特に感傷らしきものもなく、ただそこには智也がいないだけだった。
「どうしたの?キョロキョロしちゃって」
一緒に買い物に来ていた女友達が、俺の顔を覗き込んで不思議そうな目で見やった。
「なんでもない。とりあえずご飯でも食べに行こっか」
俺は笑いながらもう一度駅を振り返った。
智也のいない駅も、いつもの顔で人が行きかい、電車へと吸い込まれていく。
その光景は、俺にとって帰る場所ではなく、単に立ち寄るだけの場所にしか見えなかった。
結局、俺も彼も、「ただいま」と言える場所へと帰っていく、ただそれだけのことなのだろうか。

仕事、友達、趣味、好きな人、家族。
自分を構成するいくつものエレメントは、それぞれ自分を様々な形で高揚させつつも、結局はそれは自分を刺激するだけのもの。
俺がいつか帰るところは、きっと自分で「ただいま」と認められる場所でしかない。
自分にとって大事なものを得たり失ったりという過程の中で、自分が帰る場所の変遷はどう俺の中で息づいていくのだろう。

「何やってんの?早く行こうよ」
交差点の向こうから手を振る友達に手を振り返しながら、俺は白いものがちらつく外へと走り出した。
雪はだんだんと勢いと重さを増しながら、静かに地表へと舞い降りていく。
やがて駅は白い空気の中に静かに溶けて、人の波の中へと消えていった。

#あとがき


というわけで、当初思っていたよりもうまく纏まらなかったんですが、やっとこさ終着駅にたどりつきましたw
題材として特に面白いわけじゃなかったんですが、この引越しに関して書くときに、どうしても2月に亡くなった友達のことに触れないわけにはいかず、それと関連して自分の帰る場所についてずっと考えていたんです。
どうしてもシリアスなタッチにならざるを得なかったのと、自分の中できちんと客観視できるようにというわけで、フィクションのような体裁を取って書くことにしました。
ちなみに、彼のお母さんのイケメンの定義はどこか間違っているようでしたが・・・w
付け加えると、彼の幼馴染たちから「タレっちかわいい」と言われたのは、非常に心外なのですが・・・www
彼らとも仲良くなり、これからも交流が続いていきそうな感じです。

話に盛り上がりがあるわけでもないんで、読んでる方にはつまらなかったかもしれません・・・。
ただ、オレにとって、やっとあのことを整理してつむぎだすことが出来た気がするんですよね。
随分と通常営業も滞っちゃって迷惑かけちまいましたけどw

ただ、自分の才能の限界はある中で、できるだけ、お話として成立するように気を使って書いたつもりです。
自分が感じた漠然とした何かが伝わればいいなあって。
#FFには何も関係ない話でやっぱり申し訳ないですが^^;

最後に、読んで頂いた皆様、お話の中で登場させてしまった皆さん、そしてヤツに感謝したいと思います。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!
また次のエントリーからは通常営業ですが、いつものことながらよろしく御願いいたしまっす。
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|∀')b
完結しましたねー(´∀`)
これで1周年記念企画になるんじゃ・・・('з')
とか言ってみる

帰る場所・・・ん〜
私は どこにもないけどどこにでもある・・・?みたいな
かたちとして存在はしてないけど
自分が ここが自分の帰る場所だって思えるところが
そうじゃないかなーとか・・・
って うわ くさっ くっさぁああ!!1(涙目)


難しいよママン(=∀=)=3ボフン
ふぃr: 2005.03/08(Tue) 12:57 Edit
(ぉ
ふぃっちゃん、どもありがとうございますー^^
これで1周年記念許してもらえるでしょうかw

帰る場所って難しいなあと思います。
なんていうのかな・・・そういった不定形のような帰る場所ってのはあるのかもしれないけれど、自分が確固たる核心を持ってここだと年を重ねるにつれていえなくなってきたんスよ。
結局、用意されていた帰る場所から脱却し、自分でそれを築く側にまわったからなのかもしれません。

ネットをやってると、そういった意識が希薄になりがちなんだけど、ふとそういったネットワークが切断されたとき、どこに帰ればいいんだろってふと思い悩んだりして。
自分の魂のありかというか・・・。

くさっwww
タレ: 2005.03/09(Wed) 11:43 Edit
無題
ちょー亀レスでコメントを乗っけてみる。
まあ思い返せばコレがたれさんとの
おつきあいの最初のきっかけな訳で。
未だに読むのがちとツライ一件ですね(;_;)

実はLSメンバー全員にこの件は知らせておりません。
彼が直前にFFを解約してること、
その解約した事をLSメンバーに知らせないでと
仲のいい(?)フレ数名に言い含めていたことが理由です。
今となっては遺言に近いものになってしまいましたが、
彼の遺志を尊重し、ごくごく親しいメンバーで
彼と面識のある人のみに知らせました。
(その前後に、面識の有る人のほとんどへ
 お母様より連絡がいったようですが)

コトがコトなので管理者オンリーにしておきます。
Fou: URL 2005.05/09(Mon) 16:34 Edit

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プロフィール
HN:
タレ
性別:
男性
職業:
ホストと言われるけど違います(´・ω・`)
趣味:
音楽だいすっき!
自己紹介:
Bismarck鯖でぼんやりと生きています。
音楽大好き(聞くのも弾くのも作るのも)、それなりに拘るけどがむしゃらは好きじゃない、PTは会話がないとつまんない・・・そんなヤツの日常ですが、よかったら見てやってくださいませっ。

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