2005 |
07,03 |
«恐怖の吟遊詩人»
ジュノ下層をブラブラと歩いていたある日のこと。
「タレたん、レベル上げいく?」
リンクシェルから僕を呼ぶ渋い声。
それは、最近同じレベル帯だということで、一緒にコンビを組んでいる忍者さんだった。
ヒュームの金髪と大阪弁のミスマッチさが聞こえるたびに、僕は思わず頬をほころばせてしまう。
「おう、行くか」
僕は競売所から視線をそらし、レベル上げ希望の冒険者を忍者さんと共に探した。
夜半過ぎということもあって、人は多くても、レベル上げ帰りの冒険者ばかりだ。
ちらほらと見かける顔を見てパーティーにさそうものの、最後まで魔道士の枠が余ってしまうのだ。
「やっぱり赤魔道士か詩人がいないとね・・・」
「いないね・・・」
幾度となく繰り返すこの会話。
間接的に補助する形のジョブは圧倒的な人気を誇り、引く手数多になる一方だった。
冒険者が成熟し、高いレベルでの戦闘を行うようになった今もそれは変わらない。
「詩人ゲット!」
まるで竿に魚がかかった時のように、忍者さんが叫んだ。
思わず緊張していた空気が緩む。
これで今日も狩りに出かけられる、そんな安堵感のみが場を支配していた。
しかし。
その詩人さんがパーティーにジョインした瞬間、僕は思わず固まってしまうことになる。
「こ、この人は・・・」
(タレたん、どうしたん?)
(この人やばいよ・・・恐怖の詩人って言われてるんだ)
(またまた〜w)
小声で話す僕らに、その黒い髪をなびかせた長身のエルヴァーンの吟遊詩人は、ゆっくりと口を開いた。
「狩場はまだ決まらないんですか?」
「え、えっと・・・」
忍者さんがまごつく間に、詩人さんは眼鏡をくいっと指で押し上げ、パラパラと懐のメモを取り出した。
「この組み合わせだとクフタルの洞門、ル・アビタウ宮殿、乱獲気味にテリガン岬といったところですが、どこも許容量をオーバーしていますね。
となると、後は時間を見計らってロ・メーヴに行くというところ。現在3パーティー、右の右が空いています。意見は?」
「・・・はい、それで・・・」
決して怒られているわけでもないのに、何故か恐怖に凍るパーティー一同。
まだ狩りは始まっていなかった。
「それでははじめましょう。敵はウェポンとゴーレム。ゴーレムは3か4チェーン目に持ってきて、須らく5チェーンを維持するように」
「は、はい・・・」
「狩人さんとシーフさんなので、連携はダメージ重視でいきましょう。スラッグショット>ダンシングエッジ、忍者さんが闇連携をつなげられそうなときは合図をする」
「りょ、了解・・・」
(おい、リーダーはお前じゃないのかw)
(し、知ってるつーのwいいやろ、たぶんこの人うまいだろうし)
またもやこそこそと話す僕らに、詩人さんの目がキラっと一瞬光り、
「・・・おしおきですね・・・」
「え?」
「何でもありません。早々にはじめましょう」
かくして、僕は、どこか得体の知れない不安に震えながら、ナイフを2本取り出し、構えを取った。
フックの形に曲がった特徴的なハルパーの刃が一瞬詩人さんの姿を映し出す。
彼は・・・明らかに僕がナイフの刃ごしに見ていることを知っていた。
この上なく、上級な笑みを浮かべて。
狩人さんがやがて連れてきた獲物をひたすらナイフで切りつける。
今日はサポートジョブが侍だったため、幾分ナイフが温まっていくのが早い。
「連携いこう」
狩人さんが強烈なダメージをたたき出した後、僕は横に5回ナイフですばやく切り開いた。
刃の軌跡が踊るかのように見られるこの技は、ダンシングエッジと呼ばれるシーフの真骨頂だ。
しかし・・・5匹目の獲物を引っ張るのに少し出遅れてしまった狩人さんは、にわかに舌打ちをした。
明らかにチェーンと呼ばれる連続で敵を倒すポイントがずれてしまったからだ。
「・・・おやおや、切れてしまいましたね。どうしたことでしょうか。まさか切れるとは」
詩人さんが独り言にしては随分と大きな声で呟く。
唇の端には笑みを、目の端には冷徹さを滲ませているのは、もはや誰の目からも明らかだ。
「これは誰にお仕置きしたらいいのでしょう・・・ふふ、楽しみですね・・・」
(ちょ、ちょっと、やっぱりヤバイだろ?この人)
(い、いや、歌はよく歌ってくれたよ・・・)
(そういう問題じゃないだろwオレたちの命が・・・)
そう小声で会話をしていると、さっと獣人の模様が描かれた両手棍が出され、
「続きをどうぞ・・・死にたいのならね」
僕らは、それから無言で狩りを続けた。
おかげで、効率よく狩りは進んだが、僕らは暑くもないのに汗をかき続けたのは言うまでもない。
ちなみに、その詩人さん、亡くなった親友と同じリンクシェルのリーダーをしていたということが後で分かり、話しかけてみたのだが・・・。
「誰ですか?それは」
「ああ・・・彼でしたか。なるほど・・・(微笑)」
夏の夜に相応しい涼しさを齎してくれた詩人さんは、今日もヴァナディールのどこかで怪談話を一つ作っている。
「タレたん、レベル上げいく?」
リンクシェルから僕を呼ぶ渋い声。
それは、最近同じレベル帯だということで、一緒にコンビを組んでいる忍者さんだった。
ヒュームの金髪と大阪弁のミスマッチさが聞こえるたびに、僕は思わず頬をほころばせてしまう。
「おう、行くか」
僕は競売所から視線をそらし、レベル上げ希望の冒険者を忍者さんと共に探した。
夜半過ぎということもあって、人は多くても、レベル上げ帰りの冒険者ばかりだ。
ちらほらと見かける顔を見てパーティーにさそうものの、最後まで魔道士の枠が余ってしまうのだ。
「やっぱり赤魔道士か詩人がいないとね・・・」
「いないね・・・」
幾度となく繰り返すこの会話。
間接的に補助する形のジョブは圧倒的な人気を誇り、引く手数多になる一方だった。
冒険者が成熟し、高いレベルでの戦闘を行うようになった今もそれは変わらない。
「詩人ゲット!」
まるで竿に魚がかかった時のように、忍者さんが叫んだ。
思わず緊張していた空気が緩む。
これで今日も狩りに出かけられる、そんな安堵感のみが場を支配していた。
しかし。
その詩人さんがパーティーにジョインした瞬間、僕は思わず固まってしまうことになる。
「こ、この人は・・・」
(タレたん、どうしたん?)
(この人やばいよ・・・恐怖の詩人って言われてるんだ)
(またまた〜w)
小声で話す僕らに、その黒い髪をなびかせた長身のエルヴァーンの吟遊詩人は、ゆっくりと口を開いた。
「狩場はまだ決まらないんですか?」
「え、えっと・・・」
忍者さんがまごつく間に、詩人さんは眼鏡をくいっと指で押し上げ、パラパラと懐のメモを取り出した。
「この組み合わせだとクフタルの洞門、ル・アビタウ宮殿、乱獲気味にテリガン岬といったところですが、どこも許容量をオーバーしていますね。
となると、後は時間を見計らってロ・メーヴに行くというところ。現在3パーティー、右の右が空いています。意見は?」
「・・・はい、それで・・・」
決して怒られているわけでもないのに、何故か恐怖に凍るパーティー一同。
まだ狩りは始まっていなかった。
「それでははじめましょう。敵はウェポンとゴーレム。ゴーレムは3か4チェーン目に持ってきて、須らく5チェーンを維持するように」
「は、はい・・・」
「狩人さんとシーフさんなので、連携はダメージ重視でいきましょう。スラッグショット>ダンシングエッジ、忍者さんが闇連携をつなげられそうなときは合図をする」
「りょ、了解・・・」
(おい、リーダーはお前じゃないのかw)
(し、知ってるつーのwいいやろ、たぶんこの人うまいだろうし)
またもやこそこそと話す僕らに、詩人さんの目がキラっと一瞬光り、
「・・・おしおきですね・・・」
「え?」
「何でもありません。早々にはじめましょう」
かくして、僕は、どこか得体の知れない不安に震えながら、ナイフを2本取り出し、構えを取った。
フックの形に曲がった特徴的なハルパーの刃が一瞬詩人さんの姿を映し出す。
彼は・・・明らかに僕がナイフの刃ごしに見ていることを知っていた。
この上なく、上級な笑みを浮かべて。
狩人さんがやがて連れてきた獲物をひたすらナイフで切りつける。
今日はサポートジョブが侍だったため、幾分ナイフが温まっていくのが早い。
「連携いこう」
狩人さんが強烈なダメージをたたき出した後、僕は横に5回ナイフですばやく切り開いた。
刃の軌跡が踊るかのように見られるこの技は、ダンシングエッジと呼ばれるシーフの真骨頂だ。
しかし・・・5匹目の獲物を引っ張るのに少し出遅れてしまった狩人さんは、にわかに舌打ちをした。
明らかにチェーンと呼ばれる連続で敵を倒すポイントがずれてしまったからだ。
「・・・おやおや、切れてしまいましたね。どうしたことでしょうか。まさか切れるとは」
詩人さんが独り言にしては随分と大きな声で呟く。
唇の端には笑みを、目の端には冷徹さを滲ませているのは、もはや誰の目からも明らかだ。
「これは誰にお仕置きしたらいいのでしょう・・・ふふ、楽しみですね・・・」
(ちょ、ちょっと、やっぱりヤバイだろ?この人)
(い、いや、歌はよく歌ってくれたよ・・・)
(そういう問題じゃないだろwオレたちの命が・・・)
そう小声で会話をしていると、さっと獣人の模様が描かれた両手棍が出され、
「続きをどうぞ・・・死にたいのならね」
僕らは、それから無言で狩りを続けた。
おかげで、効率よく狩りは進んだが、僕らは暑くもないのに汗をかき続けたのは言うまでもない。
ちなみに、その詩人さん、亡くなった親友と同じリンクシェルのリーダーをしていたということが後で分かり、話しかけてみたのだが・・・。
「誰ですか?それは」
「ああ・・・彼でしたか。なるほど・・・(微笑)」
夏の夜に相応しい涼しさを齎してくれた詩人さんは、今日もヴァナディールのどこかで怪談話を一つ作っている。
これ、実は脚色してありますが、実話です・・・w
モデルにしちゃった吟遊詩人さん、ごめんなさいorz
僕をどうか呪い殺さないでくださいwww
いや、まあ冗談で、実際には笑わずに冗談を言うようなタイプの方だったんだけど。
そんなこんなで、無事にLv72になりました。
野良パーティーはいろんな人との出会いがあるからいいっすよねぇ・・・。
モデルにしちゃった吟遊詩人さん、ごめんなさいorz
僕をどうか呪い殺さないでくださいwww
いや、まあ冗談で、実際には笑わずに冗談を言うようなタイプの方だったんだけど。
そんなこんなで、無事にLv72になりました。
野良パーティーはいろんな人との出会いがあるからいいっすよねぇ・・・。
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詩人様((((;゜Д゜)))
うちにも一人、FFをβから廃ペースで駆け抜けて来た
元効率主義者で、現在ビスに転生してネカマなw詩人様がいます。
フレなのに、PT組むのおっかないんですよ。(´Д⊂
で、おしおきは何でしたか?(;*´д`)
元効率主義者で、現在ビスに転生してネカマなw詩人様がいます。
フレなのに、PT組むのおっかないんですよ。(´Д⊂
で、おしおきは何でしたか?(;*´д`)
お仕置きですよー?(;*´д`)
>なつさん
リンクさせるって怖いということが身をもってわかりましたよね?w
少しずつ覚えていけばいいんで、頑張っていきましょうー。
>Fouさん
ええ、アタリですw
とはいえ、ご本人はもっとお茶目な方っぽかったんですけど、なんか同時に怖かったんですよ^^;
>みなさん
同感です(*´д`)
転生したらエル♀にしようかな・・・。
>ぽーさん
フレなのにおっかないって人いますよね?
まあ、カッコつけずにダメなところ晒していよう、って最近開き直ってますけどw
お仕置きは、ここじゃいえません・・・orz
もう辱めを(ry
リンクさせるって怖いということが身をもってわかりましたよね?w
少しずつ覚えていけばいいんで、頑張っていきましょうー。
>Fouさん
ええ、アタリですw
とはいえ、ご本人はもっとお茶目な方っぽかったんですけど、なんか同時に怖かったんですよ^^;
>みなさん
同感です(*´д`)
転生したらエル♀にしようかな・・・。
>ぽーさん
フレなのにおっかないって人いますよね?
まあ、カッコつけずにダメなところ晒していよう、って最近開き直ってますけどw
お仕置きは、ここじゃいえません・・・orz
もう辱めを(ry
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