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Life in Progress

Bismarck鯖でおバカな日常を繰り返しているタルタルの、音楽と愛と欲望(?)に満ち溢れたFF11&リアル日記。
2024
04,19

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2005
12,13
(ハニー・カム《1》の続きになってます。未読の方はそちらを先にお読みください)
 
 
「もう一度ジョバイロに会おうと思うんだ。パクララ、今度は一緒に君もきてくれる?」
彼からの連絡を受け、私は久しぶりにサンドリア王国の地を踏んだ。
慣れ親しんだウィンダスの地とは違う、ピリっとする空気がほどよく身を包む。
古い石造りの町並みに仄かに射す西日の美しさに、私は思わず立ち止まった。
機能美と言うのだろうか−人の温もりを残しつつも整然と立ち並ぶ建物は、自然との調和を重視するウィンダスの町並みとは別の魅力がある。
ジョバイロ邸は、そんな南サンドリアの西、貴族の邸宅が並ぶ通りの一角にあった。
 
 
 
「妻は・・・まだ見つかりませんか?」
「少なくともウルガラン山脈には特に奥様のいた形跡はなかったようです。調査中ですが」
「そう・・・期限はあと一週間とさせていただきましょう。それで見つからなければ、覚悟を決めることとします」
ジョバイロ候は、20代後半の若いエルヴァーンの男性だった。
女性にも一瞬見えるほど、繊細な顔立ちはエルヴァーンならでは、なのだろうか。
貴族らしい絹ざわりの赤い服が長身にマッチしていたが、その反面、私は候に対して違和感を持った。
ハスキーな声の響きが、重厚そうなエルヴァーンのイメージと違っていたからなのかもしれない。

「すみません、少し質問を」
私はジョバイロ候の方へと向き直った。
候の視線が、上から下まで私を舐めるように見ているのがわかる。
「どうぞ、事件に関係あることならば」
候はテーブルのお茶に手をつけながら、睨みつけるような目でこちらを見ていた。
「奥様がウルガラン山脈に行かれたというのは、どうしてわかったのでしょう?」
「書置きがありました。勿論妻の字でね。冒険者ではない妻がウルガランへ出かけたとなれば、残念ながら生きてはいないかもしれない」
そして出てきた一枚の紙には、丁寧な公用語の筆記体でこう記されていた。

 『親愛なるあなたへ』
 
 いつもわたしを見ていてくれてありがとう。
 でも、こうあなたに告げるのも最後になりそうです。

 今度は、ウルガラン山脈へ向かい、神秘の氷を取ってきます。
 危険な場所なので、恐らく戻れないと思います。
 今まで本当にありがとう。ずっと愛してた。

 一ヶ月経って私が戻らなければ、死亡届けを出してください。


そして、最後にサインがしたためてある。
女の人らしい、繊細でやわらかな字だった。
ジョバイロ候は、いい夫だったのだろう−その手紙には、きな臭さの一つも感じないだけの不思議な説得力がある。
そう思いながら、ふとパートナーの顔に目を映すと、彼は神妙な顔でなにやら考え込んでいた。
「これ、お借りしても?」
彼がそう言うと、候は軽く頷くと同時に、「失礼、少し外します」と言いながら扉の向こうへと慌しく消えていった。
 
 
 
「今の手紙、何かおかしなところがあったの?」
私がそう尋ねると、彼は一瞬口よどんだ後、重い口を開いた。
「いや、今の手紙がおかしいんじゃないんだ。これ自体は、恐らく大使館で照会をかければ、本人の字と一致するって証拠もでると思う」
そして、手紙を再び開いた後、
「前回候と面会したときには、この手紙は求めても出てこなかったんだ。確か、捨てたとかなんとか・・・」
「捨てた?」
その言葉が本当なら、この折り目もない綺麗な手紙はどうしたことだろうか。
もしこの手紙が彼との面会の後に書かれたものとだとすれば・・・私達は何か大きな勘違いをしているのかもしれない。

ふと、何の気なしに、応接室にある本棚に目が止まった。
恐らくはウィンダスからの輸入ものと思われる学術書が、所狭しと並んでいる。
貴族の道楽なのかはわからないが、失踪した夫人の趣味である珍品収集と何らかの関係があるのだろうか−そう思って、私は本棚へと一歩足を踏みだした。
その時だ。

−これは?
棚の端に並べられた白い靭皮紙が、ふと視界の隅を掠めた。
白魔法のスクロール。
ケアル、ディア、ポイゾナ・・・駆け出しの冒険者用の魔法がずらりと並ぶ。
几帳面に並べられたそのスクロールは、パルドニア地方への移動魔法「テレポヴァズ」のスクロールを最後に途絶えていた。
どのスクロールも既に使用された後があり、もはや織り込まれた魔力は解放されている。
「・・・こりゃ最初からやりなおしだな」
後ろから近づいてきた彼が、私の横からそのスクロールを覗き込みながら、一つ大きく息を吐いた。
幼い顔立ちに似合わないそのため息は、私たち冒険者が抱えるジレンマにも似ていた。
『どんな依頼であれ、依頼主を信用すること』
冒険者であれば誰もがわかっているこの言葉も、こういった事態の前ではふと反故にしたくなる瞬間がある。
今回の場合、魔法のスクロールがあるということは、夫人が冒険者であった可能性が高いということを意味していた。
しかし、候は先ほどこう言ったはずだ。
『冒険者ではない妻がウルガランへ出かけた』と。

だんだんとパズルのピースが絡み合っていく感覚。
いくつもの事実が私の頭の中でゆっくりとアンサンブルを奏でていく。
「私はサンドリアに残って、色々と調べてみます」
「わかった、頼むよ。俺は、もう一度ウルガランで手がかりを掴んでみる」
私の言葉に彼はそう返し、いそいそと屋敷を後にした。
後姿が夕陽に染まって、やがて見えなくなるのを私は立ち上がったまま見守っていた。
 
 
 
残り5日とはいえ、悠長にしている時間はなさそうだ。
私も、ふとまどろみたくなるような柔らかな日差しから目をそらし、扉に手をかけた。
「おや、お帰りですか」
背後の声に振り向くと、部屋の奥に通じる扉から、ジョバイロ候が出てきたところだった。
「ええ、時間もありませんので・・・パートナーは勝手ながら先に失礼させていただきました」
「そうですか・・・何か手がかりでも?」
少しかすれた声でそう私をじっと値踏みする候の視線は、お世辞にも好意的とはいえなかった。
「わかりません。でも・・・必ず奥様を見つけてみせます」
私なりの誠意を込めて、そう言葉を返す。
しかし、候の目はパルドニアに吹くブリザードと同じく、温かさというものがおよそ感じられなかった。

「わからないでしょうね、貴女には」
まるで少年のように軽く、ハスキーな声がホールに響いた。
「人には色々な愛の形があります。貴女があのタルタルの少年に想いを寄せるのと同じように、私も私なりに妻を愛している」
「・・・!」
私が彼に想いを寄せている?
顔が思わず紅潮していくのが自分でも分かる。
「お言葉ですが・・・私はパートナーとして彼を信頼しているだけです。それ以上でも以下でもありません」
「それをどう名付けるのは貴方の勝手です。しかし、間違いなく貴方は彼を心の拠り所にしている。違いますか?」
「ちが・・・」
ジョバイロ候の言葉に私は明確に反芻することができなかった。
今回の依頼の話を聞いた時、彼の少し高い声に胸を掴まれたのは、ほかならぬ私だった。
それは、少しならずとも、彼の言葉を、彼の声を私が待ち望んでいたからだ。
 
 
 
そして、そうした願いにも似た感情が何だったのか・・・私はようやく思い当たった。
相手に対して、自分へのリアクションを期待し、願う行為−それを私達は「恋」と呼ぶのだと。

(ハニー・カム《3》へ続く)


 
 
ということで、先日のショートショートの続きを更新しました。
お待たせしてすみませんーorz
少しずつ事件と、パクララの心が同時に動き出したような回になりましたですねw
このペースだと、全4回か5回で解決編までいけるかなと思ってます。
一応トリックについては、そろそろヒントが出てきたので、分かる人にはわかるかもしれませんが(*´д`*)

つーわけで、遅筆&年末進行で妙に忙しいので、適当に急かしてやってくれるとありがたかったりしまふorz
さてと、ラジオもそろそろ目処つけなきゃな・・・。
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無題
獣人支配か・・・なるほどw
こういう探偵系のって、コナンくんくらいしか読んだことないから(しかもマンガかよw)
そろそろルパンくらいは読んで勉強しようかな(モンキーパンチの)ヾ(・ε・。)ォィォィ

自分も、知り合いにシーフが多いってことで
季節ネタでサンタ盗賊団の話でも書こうかなって
頭を過ぎったんだけど
知識ないし<カラクリかんがえれないしってことで
断念しましたよw

てゆーか、更新早いね;;
オレのより先に完結しそうだ(*´∇`*)
ひ〜ほ〜♪: URL 2005.12/17(Sat) 23:38 Edit
最後の一文が目を惹きつけて…。
何とも言えません。
…何だろな、抽象的なことの一面を言葉で見せてもらったって感じました。
たれっちの言葉の魔法だね。
今年いっぱいに完結…よろてぃくw
…と言ってみるテスト…(・∀・) ニヤニヤ

身体壊さないように、楽しんで書いてね〜♪
なっち: URL 2005.12/18(Sun) 14:25 Edit
無題
>ひーほーさん
続きものってブログではちょっとやりにくい印象もあって、避けてたんですけど、なんとか書き続けてる感じです。
からくりは最初さっぱり思いつかなかったんだけど、ようやく納得できそうなからくりが思い浮かんで一安心w
実はもうトリックを仕掛けてあるので、後半に行くにしたがって少し探偵的な要素が入るかなーと思ってます。
ひーほーさん、クリスマス前で忙しいと思うけど、小説アップ楽しみにしてますよ!

>なっちさん
ジョバイロとパクララのこの会話、意味のない部分に見えつつ、実は一番関係してるのがこの部分なんです。
一つ軽くネタばらししてしまうと、何故ジョバイロ候が初対面のパクララにこんな話をしたのか。
私なりに愛している、という言葉の真意こそが、実はこの事件の大きなカギとなります。

でも、そんな理屈ぬきに、いろんな切り口で楽しんでもらえるのが一番なんですけどw


次の第3回で調査が終了し、第4回でこの事件の解決編となる予定です。
全部で4回か5回になるかなあ。
頭の中ではもうあらすじやトリックなどは出来上がってるので、続きは今しばらくお待ちくださいませw
タレ: 2005.12/19(Mon) 11:37 Edit

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プロフィール
HN:
タレ
性別:
男性
職業:
ホストと言われるけど違います(´・ω・`)
趣味:
音楽だいすっき!
自己紹介:
Bismarck鯖でぼんやりと生きています。
音楽大好き(聞くのも弾くのも作るのも)、それなりに拘るけどがむしゃらは好きじゃない、PTは会話がないとつまんない・・・そんなヤツの日常ですが、よかったら見てやってくださいませっ。

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