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Life in Progress

Bismarck鯖でおバカな日常を繰り返しているタルタルの、音楽と愛と欲望(?)に満ち溢れたFF11&リアル日記。
2024
04,25

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2005
12,06
耳に付けた乳白色のパールから、聞きなれたテノールが流れる。
久しぶりに聴くパール越しの彼の声は、いつものそれよりも少し大人びたトーンで、私の胸を僅かにかき乱していく。
「久しぶり、パクララ。調子はどう?」
「ええ、変わりないわ。あなたは?」
「・・・君に、会いたい」
え、と思わず声が漏れた。
パールを付けた側の耳たぶが妙に熱を持っている。
「新しい依頼を請け負ったんだ。君の力が借りたい」
ふっと体中から力が抜けた。私は今、何を期待してたのだろう。
 
 
 
彼とこうして連絡を取り合うようになって2ヶ月が経った。
不思議な鏡の力によって導かれた私達は、こうして時折耳に装着したリンクパールを通じて連絡を取り合っている。
私と同じタルタルの彼は、私よりもずっと経験を積んだ冒険者だった。
それでも彼は、こうして気が向くと私への呼びかけをしてくれる。
その声を聞くたびに湧き上がる感情は、単に冒険者としての喜びなのか、それとも違うものなのか、今の私にはまだ判断が付かなかった。

縁。
サンドリアやバストゥークの言葉でどういうのかはわからないけれど、私達タルタルはそんな言葉をよく使う。
絆でも繋がりでもない、私達の存在そのものがもっと大きな何かによって導かれているような、そんな感覚。
安易に使いたくなかったその言葉だけど、ここ最近そんな言葉を口にしてみたくなる。

幼かった頃、冒険者だった父親は殆ど家には滞在していなかった。
半年に一度顔を見られればラッキーだとすら思っていた。
父が最後に遺した言葉は、確かこうだ。
『人の想いが縁を創り、縁が人の思いを創る。宿命ではなく、自らの想いによって連鎖していくものなのだよ』
あれから幾年かが過ぎ去り、その縁に導かれる形で私は冒険者として、今このヴァナディールに立っている。
全てをそれで説明できるとも思えないけれど、信じてみたいということ自体が既に縁の循環のシステムに組み込まれてるのではないか−そうふと思った。
空を見上げれば、タイタンの星座がキレイにその体を横たわらせている。
ふーっと白い息を手に吐きながら、私はしばらく藍色の空を見上げていた。

−もう冬がそこまで来ている。
 
 
 
「寒い、とは聞いていたけど、ウルガラン山脈に来るとは聞いてなかったわ・・・」
「あはは、ウィンダスじゃこの寒さは味わえないよな」
翌日。
パルドニア地方の最果て、ウルガラン山脈は、その日最悪のコンディションだった。
私は、彼に連れられて震える体を引きずりながら、真っ白な視界の中へと足を踏み入れた。
彼も、オレンジのグラデーションがかったその金色の髪に真っ白な雪を溜め込んでいる。
後ろ髪を縛ったゴムの白い色が、不思議と雪の中でもくっきりと浮き出て見えた。

「今回はどんな依頼なのかしら?」
「・・・サンドリアの小金持ちの貴族からの依頼さ。失踪した妻を捜してくれ、ということなんだ」
「失踪した?」
「そう、淡々としたものだったよ。死亡が確認できたなら、葬式を行って、全て終わりにしたいらしい」
気のないそぶりでそう呟いた彼は、次の一言をこう紡いだ。
「...どうもきな臭い匂いがする。パクララ、巻き込んですまないけど、慎重にいこう」
ザルカバードのフィヨルドにわいわいと騒いでいた人と同一人物とはとても思えない。
私も、彼のきりっとした横顔を視界の隅で視認しつつ、グローブの紐をきゅっと結び直した。

事件のあらましはこうだ。
南サンドリア在住のエルヴァーンの新興貴族であるジョバイロ候には、子供がなく、10歳ほど年長の妻が1人いる。
先日、冒険者組合に「妻が行方不明になって1ヶ月ほどになる。捜索してくれないだろうか」という依頼が入り、私のパートナーへと周ってきたというわけだった。
「でもどうしてここへ?」
「ジョバイロ候曰く、ウルガラン山脈の洞窟へ神秘の氷を一人で取りにきたそうなんだ」
神秘の氷−それを保持している者の重力を一時的に浮遊エネルギーへと変換することが可能だという。
おとぎ話にも思えるそれを何故その夫人が求めたのかはともかく、それが真実であれば、彼女を探し出すのは非常に困難であるように思えた。
なぜなら、千人落としの崖と呼ばれる崖を始め、冒険者でもない普通の人がそこに留まるのにはあまりにも難しい環境が揃っているのだから。

私達は、とりあえず手がかりになるものはないかと、雪原に一歩、そしてまた一歩と歩みを進めた。
雪が落ちる音だけがしんしんと聞こえる。
「・・・寒い・・・」
「大丈夫か?何か羽織るものある?」
そういうと、彼はふと背中の荷物からストールのようなものを取り出した。
「実は、ちゃんと準備してきたのさ。女の子を冷やしちゃいけないからな」
タルタルのフェミニストなんて珍しいわ−その時はまだ、その程度の感想だった。

ふと背後を振り返ると、足跡がだんだんと雪にかき消されていくのが目に映った。
奥へ行くに従い、少しずつ雪のかさが増していく。
「あら?」
ふとおかしなことに気が付いた。
私と彼の足跡、合計4つあるはずが・・・合計6つの足跡がそこにはあった。
明らかに動物状のそれは、私の背後でふつりとなくなっている。
「パクララ、上だっ!」
鋭い声と共に、彼がジャキンと音を立てて短剣を抜いた。
−ラプトル、それもかなり大型のが一匹。
私一人では明らかに太刀打ちできそうにもないのが見て取れた。
「かの者に流るる時の水よ、その流れを濁流に変えよ!ヘイスト!」
集中する私の足元から、白き魔方陣がぼーっと浮かび上がる。
彼の短剣さばきが、少しずつ熱を持って加速していく。
「唸れっ、ダンシングエッジ!」
横に5回、切り開くと同時に、ラプトルはバタリと音を立てて倒れた。
軽く短剣を振り、血を落とした彼は、何かを言おうとして、そして一瞬躊躇った。
「夫人はなぜ・・・なぜここに来たんだろう」
「何故って・・・神秘の氷目的ではないの?」
私の問いかけにも、彼はどこか解せない様子で、言葉を続けた。
「前情報では、夫人は極度の珍品コレクターだというんだよ。これが間違いとは思えない。でも・・・どうして一人で来る必要がある?」

そうだ。
新興貴族とはいえ、仮にも特権階級である貴族がわざわざ危険を負ってまで来る場所なのだろうか。
これじゃ、プリズムパウダーがいくつあっても足りないはず。
こういう仕事こそが、冒険者の仕事ではないのか。
「考えられることは3つだ。
冒険者を誘って共に取りにきたか、冒険者を取りにやらせたか。あるいは−」
−本当は全くのでたらめか。

「最初きな臭いという話をしたよな?最初に依頼を受けたときなんだけど・・・見つかるかもわからない中で、ただ死を認めたがってる夫の態度を見て感じたんだ」
「でも・・・」
「うん、早く決着を付けたいという気持ちもわかる。単に俺の勘だ」
そういうと、彼は振り出しに戻ったな、と呟きつつ、また雪を確かめるようにしながら、彼女の気配を探り始めた。
何か方法はないだろうか−その想いだけが空回りするままに、その日は徒労に終わった。

 
 
ジュノの上層、工業地区の片隅にひっそりと佇むそのバーで、私は彼と杯を傾けていた。
「冒険者全部にヒアリングするわけにもいかないしな・・・どうすりゃいいんだ」
今日の捜査では、限りなく感触はゼロに近い。
闇へと落ちる一歩手前のような感覚。
こういうときは発想を逆転してみよう−と言うだけなら易い話だ。

「ねぇ・・・人気のない広大なウルガランで彼女を見る可能性があるとしたらどんな人なのかしら?」
「冒険者だろうけど、あんな場所で偶然出会う可能性なんて万に一つだよ。薬品を使ってたらもっとわからないはずだろ?」
そう、確かにいう通りだ。
だから、偶然じゃなく、必ず見つかる方法があればいいだけの話。
「・・・ガードはどうかしら?彼らは、交代制でいつもアウトポストに立っているでしょう?」
ちょっとはいい案だと思った。確かに冒険者らしからぬ格好の人間が危険地帯にいれば、彼らの記憶にも残るはず。
何より、始終そこにいるということがポイントだろうから。

しかし、彼は首を横にふった。
「いつもなら、ザルカバード側にガードがいるはずなんだ、たしかに。」
「いつもなら?」
「うん・・・ここ数ヶ月、パルドニアは獣人の手に落ちている。ガードが立っていないんだ」
ワイングラスをぐるぐると回しながら彼は目を伏せた。
店内に流れるジャズの音だけが、静かな店内に沈殿していく。
あの雪の向こうにもし彼女がいたとしたら、何を考えてあの静かな雪景色を見ていたのだろう。
その後、レンタルハウスに帰っても、私は明け方近くまでうまく寝付けずに、なかなかあけない夜にやきもきしながら時を過ごしたのだった。
 
 
夜明け前の闇が一番深いんだと、私は初めて知った。

 
というわけで、お待たせしちゃいましたが、80,000HIT記念のショートショートの一部を公開しました!
いやー、珍しく続きものですがw
しかも、ミステリー調。
どこまでいけるんかなーと思いつつ、意外と楽しみながらやってます。

今回はFF11の世界が舞台で、しかもフェローを描いたもの。
以前お試しでフェロークエを書いたら面白かったので、今回はそこから少しはみだして、オリジナルな展開にしてみました。
まだまだ解決編までは遠いんですが、あまり冗長にならないように、ショートショートの枠組の中でやれるかなーと思ってます。
続きはどうぞ気長にお待ちくださいませw
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無題
タレっちは男だったよね?何かメッチャクッチャ繊細な文章だから、疑っちゃった。もし女の子だったらオレとデートしちくれw男だったら、どうでもいいけどさwww
ま、冗談はさておき・・・、とても楽しく拝見させて頂きました。裏打ちされた教養力とでもいうんすかね?オレの書いてる幼稚な文章と違って、ホント流れるように繊細で快適で綺麗で心地よくて、うん、あれだな美術品って感じ(*´∇`*)
ジェラシー&リスペックチョですわ〜♪うーむ、オレも精進するぞぉぉぉぉぉっ!

P.S.続き楽しみにしてます
ひ〜ほ〜♪: URL 2005.12/06(Tue) 21:55 Edit
無題
タレたん…やっぱり男にもてるんだね( ´_ゝ`)w
お話すごく面白かったです!続きがキニナルにゃ〜☆
♪((O(*・ω・)O))♪ドキドキ
ジブ: URL 2005.12/07(Wed) 13:10 Edit
素敵ステキw
久々にたれっちワールドを堪能。
まぁ最初の書き出しったら無かったけどね…w
女心をむぎゅぎゅっっとわしづかみですな。ハィ

静かに雪が舞い降りる夜に、ゆっくり読めるお話やと思います。
楽しみにしてます。
なっち: URL 2005.12/07(Wed) 15:59 Edit
無題
続きものなのに、コメントついてるー。・゚・(ノд`)・゚・。
反応寄せていただけるだけでもホントうれしいです〜。
皆様、ありがとうー。

>ひーほーさん
残念ながら男ですwww
ってか、最近萌えキャラとかいわれるんですけどね、野郎から・・・何かが間違ってるorz

そんな上等なもんじゃないッスよ〜w
ひーほーさんの文章みたく、軽やかにはどうしても書けないので、開き直って書いてたりするんですけどね。
オレもひーほーさんの小説好きなので、それくらい面白いもの書ければいいなーって思ってます。
半分知識とか確かめずに書いてるので、変なとこあったらいつでもつっこんでやってくだされw

>ジブたん
やっぱりってなんだよっ、やっぱりってwww
続き、頑張ってかくぜー!

>なっちさん
最初の書き出しったらなかったけどね・・・はどういう意味なんでしょw

このフェローのパクララって、元々穏やかなしゃべり口のフェローなので、女らしさとか動揺はありつつも、基本的にはその穏やかなトーンが影で生きてる作品にしたいなーって思ってたりするのですw
だから、静かな雪の夜に〜っての、すごく自分がイメージしてたのに近くて、とてもうれしかったり。
読み終わった後にほっこりと幸せになれる作品になればいいなあ。
タレ: 2005.12/09(Fri) 03:19 Edit
「・・・君に、会いたい」
…この書き方ですよ、たれっとさんw
そりゃコメントのコメントにまたコメントしますよw
個人的すぎる意見だと思うんですが、
たれっちの「らしさ」みたいなのがショートショートにとても出ると思って楽しんでます。
何気に気持ちの説明が不十分になりがちな男性陣。
わかっている、わかってもらいたい、わかってるだろう…
人と人との距離が近くなると発生することだと、痛感します。
ちょと脱線気味なので、これで、おしまぃw
がんばらないで、楽しんで書いてください。

ほっこり気分で楽しみにしてますから…♪
なっち: URL 2005.12/09(Fri) 04:04 Edit

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プロフィール
HN:
タレ
性別:
男性
職業:
ホストと言われるけど違います(´・ω・`)
趣味:
音楽だいすっき!
自己紹介:
Bismarck鯖でぼんやりと生きています。
音楽大好き(聞くのも弾くのも作るのも)、それなりに拘るけどがむしゃらは好きじゃない、PTは会話がないとつまんない・・・そんなヤツの日常ですが、よかったら見てやってくださいませっ。

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